2人以上の所得者がいる場合の扶養親族の帰属

 所得税においては、所得者が2人以上いる場合に、これらの者の控除対象扶養親族の取扱については、勤務先に提出する「給与所得者の扶養控除等申告書」に記載されたところによることとされています。両親が所得者である場合には、お互い話し合って、長男は夫の扶養親族に、長女は妻の扶養親族にするか、あるいは、両親の所得の多寡によって家計全体で最も節税となる扶養親族の帰属を選択するかは、その両親の自由です(控除対象扶養親族の要件を満たしていることが前提)。このように、所得者が2人以上いる場合、同一人をそれぞれの所得者の扶養親族として重複して申告しない限り、どの所得者の扶養親族としても差し支えありません。(1)別世帯の2人以上の所得者の場合 同じ世帯であれば、だれの扶養親族にするかお互い話し合って決められますが、別世帯だとこの辺がなかなか大変です。 例えば、両親が離婚した場合、元夫が養育費を支払っている限り、その子は、元夫の扶養親族にあたります。そこで、離婚した両親がそれぞれ勤務先に子を控除対象扶養親族として申告した場合、この重複申告は認められません。では、一体、いかなる基準で1人の所得者の控除対象扶養親族と判定するかが問題になります。(2)税務署の判断 このような、離婚した両親からいずれも自己を扶養親族とする「扶養控除等申告書」の提出があったケースで、税務署は「合計所得金額が大きい元夫の扶養親族に該当する」と判断し、元妻の扶養親族を認めませんでした。この処分に納得のいかない元妻は異議申し立てをしました。(3)審判所の判断 元妻の請求を受けた審判所は、次のように判断しました。「所得税法では、いずれの扶養親族とするかが定められない場合は合計所得金額の多寡で判定するが、本件の場合はそのような事例ではなく、この場合、先に扶養控除等申告書を提出した方の居住者(元妻)の扶養親族とすべきである。」 事実によれば、元妻は平成17年12月に、元夫は平成18年1月にそれぞれ勤務先に扶養控除等申告書を提出していました。 家族関係も複雑になりました。いつ書類を収受したか、会社にとっても管理責任が問われる時代です。(2008年12月掲載)

妻のヘソクリは相続財産

 妻のヘソクリを、税務当局が「税務上の相続財産」に該当すると判断したことで、納税者と税務当局が争う審査請求事件がありました。 税務当局は、妻名義の預貯金の一部を相続財産と認定、更正処分および過少申告加算税、重加算税の賦課決定処分を行いました。この処分に対し相続人である妻は、「妻名義の預貯金は夫との婚姻前から保有していた預貯金であって、妻固有の収入や生活費を節約して貯めたヘソクリだ」と主張し、その全部取り消しを求めたのです。 国税不服審判所は、預貯金は「一般的にはその名義人に帰属するのが通常である」としたうえで、「しかし、別の名義の預貯金への預替えが容易で、形式上の名義を家族にすることもまれではない」とし、「その管理運用の状況、贈与の有無などを勘案して、その帰属を判断することが妥当」だとしました。さらに、妻の収入状況を「妻は婚姻時の持参金や先代からの相続財産はなく、婚姻後は定職についていない」とし、妻が生活費を節約して形成したと主張するヘソクリについては、「夫が家庭生活を妻に委任し、その費用を妻に渡すことはあり得ることであって、その事実をもって妻の財産になるわけではない」と結論付けました。 そして、これらを総合的に勘案して、妻名義の預貯金は、「原資は夫が獲得した所得から賄われていることや、その管理運用の状況などを併せると、その帰属先は夫にあった」として、妻の主張を棄却しました。(2008年11月掲載)

前払費用を少し深堀り

■企業会計原則における前払費用の規定① 一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価② このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となる
■税法通達での短期前払費用の規定 一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するもので、次のもの。① その支払った日から1年以内に役務の提供を受けるもの② その支払った額に相当する 金額を継続してその支払った日の属する事業年度で損金経理しているもの③ 次期以降の収益との個別対応関係にある費用ではないもの
■両者の共通点と相違点 ともに支払を前提としているので、未払いの場合は前払費用にはなりませんが、支払いには手形支払いも含まれます。通達での前払費用の規定は、「時間の経過とともに次期以降の費用となる」ということに触れていません。それでか、雑誌・新聞の購読料、インターネットのバナー広告代金、野球やボクシングのボックスシートチケット代金などについて、これらを短期前払費用に含めている解説もあります。
■通達規定①②③ 税法でテーマになっているのは、損金算入可となる短期前払費用のみです。 通達①の意味は、前払期間は最長1年との要求で、2年分を支払った場合には、未経過分の全額を資産勘定に計上しなければならないということです。ただし、自賠責保険料は保険期間が最長3年ですが、少額不追求として取り扱われています。 通達②の意味は、会計処理の継続性の要求で、毎月払契約の家賃を年払い契約に改めることなく任意に年払いした場合などと不規則でも、常に支出時に費用処理をするということの要求です。なおこれは個別の項目毎への要求で、短期借入金利息は支払時損金、長期借入金利息は前払処理というようなことでもよいということです。 通達③の意味は、借入金を預金、有価証券等に運用するような場合には、支払利息と受取利息・受取配当金が個別対応関係になるので、期間の経過に応じた損金処理が要求されるということです。(2008年10月掲載)

現金勘定は管理が大変

■現金残がマイナス 小規模同族会社で、社長の財布と会社の財布が曖昧な企業は、帳簿の作成も遅れがちです。年度末が終わってから帳簿を整理したら結果として現金がマイナスだったり、ありもしない何百万という現金残があったりすることがあります。慌てて社長からの借入や社長への貸付にしてその場を繕ってはいませんか?
■青色申告取り消しも 青色申告の条件に仕訳帳・総勘定元帳等の帳簿を備え付け、取引を記録すること、そして、現金の出納に関しては、取引の年月日、事由、出納先及び金額並びに日々の残高を正しく記載すること、と言う一項目がありますので、現金勘定を使う以上は、マイナス残があったり、異常な過剰残があったりすることは、避けるべきです。
■考え方としては間違っていませんが・・・ 現金出納帳の残高がマイナスということは社長の財布から経費が払われているのですから、その部分は社長からの資金の仮受けをしていると解釈することは間違っていません。会社の金庫には金がないにもかかわらず、現金勘定残高が異常に多い場合は、会社の財布から社長への資金の流出があったと考えて社長への仮払いをしていると解釈することは間違っていません。しかし、現金勘定の残高にこだわって、借入れや貸付けの架空の仕訳をいれることはしてはいけません。それではどうすればよいのでしょうか。そこで決算前の大事な対策の一つに現金勘定の整理があります。そうならない為には、毎日現金出納帳を付ければよいのですが、既に決算を前に、現金出納帳をつけていなかった企業は、1ヶ月前に決算のつもりで帳簿を整理してみてください、期中に現金の異常に気がつけば、まだ手があります。現金がマイナスのときは預金から現金を引き出しプラスにしておくとか、過剰な時は社長が会社の預金に現金を預けるとかすることで社長との貸し借りを帳簿に残さずに済みます。会社と社長との根拠のない金銭の貸し借りは、取引の裏付けを求められたとき窮します。現金残のマイナスは帳簿管理のずさんさを自白するようなものです。(2008年9月掲載)

貸倒損失の計上時期について

●貸倒損失が認められる場合 売掛金や貸付金が回収不能となった場合は、貸倒損失として損金に処理できます。しかし回収不能かどうかの判断は様々で、税務上では通達で大きく以下の3つに分けて通達で細かく条件を定めています。(詳細は、ご相談ください)① 会社更生法や特別清算・債権者集会での決定・書面による債務免除等法的に債権が消滅した場合。② 実質的に債権の全額が回収できないことが明らかになった時。③ 売掛債権が取引停止後1年以上回収できないときや、回収のコストが債権金額より大きい時。
●人情としては早く落としたい 売掛債権などは売上に上げて収益としていますから、どうせ回収できないのなら税金を払う前に損金として落としてしまいたいのが人情ですが、回収不能の条件を満たしていない場合は、税務上損金として認められませんからご留意ください。
●遅い分ならかまわないのか? 逆に今期は赤字なので、回収不能が明らかとなったが、来期に落とす分には遅いのだから問題はないだろうと、そのままにしておいて次の期に損金に落とした場合はどうなるのでしょう結論から言えばその場合も、損金としては認められません。貸倒損失は、回収不能であることが明らかになった事業年度において損金処理することが出来るとありますので、明らかになった事業年度以外では損金処理はできませんので気を付けてください。
●欠損金の繰越延長と同じ これは税務上欠損金の繰越期間は7年ですが、その後の事業年度で貸倒損失の処理を認めると、実質的に繰越期間の延長を認めることとなるからだと言われています。(2008年8月掲載)

リース資産の取得時に少額減価償却特例は使えるか?

 今年の4月1日から、所有権移転外リースが「売買」とみなされることになりました。所有権移転外リースというのは難しい言い方ですが、もっとも一般的なリース取引のことです。企業が機械や設備を購入した際に利用しているリース取引は、その機械や設備が他に転用できないような特殊なものである場合を除き、大半が所有権移転外リースということになるでしょう。 このリース取引が売買とみなされるということは、リースで取得した資産も減価償却資産になるということです。そうなると、少額の減価償却資産を取得したときに使える各種特例の取り扱いが気になります。少額の減価償却資産を取得したときの特例には以下の3つがあります。
①少額の減価償却資産の取得価額の損金算入(法令133)使用可能期間が1年未満、または取得価額10万円未満の減価償却資産は、その全額を当期の費用にできる。
②一括償却資産の損金算入(法令133-2)取得価額20万円未満の減価償却資産(①除く)は、3年間での均等償却ができる。
③中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措法67-5)中小企業(青色申告事業者)に限り、取得価額30万円未満の減価償却資産については、年間300万円まで当期の費用にできる。
 このうち、①②の特例については、残念ながらリース資産は対象外です。リースで取得した資産に使うことはできません。 
 一方、③の特例についてはリース資産も対象外となっていません。法令上はリース資産でもこの特例を使えるわけです。たとえば「一台20万円のパソコンを10台、リースで取得した」というケースで、取得価額の200万円を当期の費用として処理できるのであれば、非常に使える節税対策として考えられます。 ところで、この③の特例の適用条件に「損金経理」があります。損金経理とは実際に費用を計上するということですから、上の例の場合、取得した事業年度において200万円を費用計上することになります。となると、翌期以降にリース会社に支払うリース料はどうなるのと心配になりますが、これについては、当期の費用処理をする際にリース負債を計上しておき、そのリース負債を減少させていくというイメージ(例:リース負債/現金)で処理することになりそうです。この場合、支払ったリース料は借金の返済と同じですから、費用としては認められません。(2008年7月掲載)

支払った消費税が全額控除できない場合も?

●消費税の課税売上割合が95%未満となった場合は仕入控除税額が制限される 消費税の申告にあたり原則課税方式を選択している場合は、課税売上割合(課税売上と非課税売上の合計に占める課税売上の割合)が95%以上であれば、支払った消費税は、受取った消費税から全額控除することができます。 ところが土地や株式の売却・土地や住宅の賃貸収入などがあった場合には、非課税売上が増えて課税売上割合が95%未満となることがあります。この場合には、全額控除することが認められず、課税売上高に対応する課税仕入税額を別途算出し控除しなければなりません。この算出方式には、個別対応方式と一括比例配分方式とがあります。
●控除方式には2種類ある
(1)個別対応方式 課税売上に対応する仕入税額と課税非課税共通の仕入税額のうち課税売上割合相当額の合計額をもって控除対象仕入税額とする方式です。
(2)一括比例配分方式 課税仕入税額の合計額のうち課税売上割合に相当する額のみ控除対象仕入税額とする方式です。
●一括比例配分方式と個別対応方式とどちらが有利? 一般的に、非課税売上に対応する課税仕入が多く発生する場合には、一括比例配分方式を選択した方が有利です。 一方、課税売上に対応する課税仕入が多く発生する場合には、個別対応方式を選択した方が有利です。
●選択は申告書提出時までに行えばよい 消費税の申告書提出時までに、いずれか有利な方式を選択することが可能です。但し一括比例配分方式を選択した場合、2年間継続適用しなければなりません。
●事務処理が煩雑になることもある 個別対応方式は、取引ごとに課税仕入を課税売上対応、非課税売上対応、課税非課税共通対応の3つに区別して経理することが必要ですので、日常の事務処理が煩雑になる場合があります。(2008年6月掲載)

有姿除却とは

 昨年、火力発電設備について、一括除却損を計上したことにつき、まだ個々の資産のすべてが使用価値を失ったと言い難いとして税務否認を受けた事案について、全部取消しで納税者勝訴の判決がありました。
●除却処分とは 固定資産の処分には、売却処分と除却処分があります。除却処分とは、使用を廃止した固定資産について解撤・破砕・廃棄等をすることを指します。ただし税務上、除却の態様にはこの実際の除却のほかに有姿除却があります。
●有姿除却とは 有姿除却とは、使用を廃止した固定資産について、廃棄等は行っていないが既に使用価値の尽きていることが明確になったことを根拠に、その現状有姿のままスクラップ価額を残したところで除却処理することをいいます。法人税通達には、これについての確認規定がおかれています。
●判決での規定 判決によると、「除却とは、既存の施設場所におけるその事業固定資産としての固有の用途を廃止したものをいうものと解すべきであり、設備稼働が廃止され将来再稼動の可能性がないと認められる以上、設備を構成する個々の固定資産についても、設備稼働の廃止の時点でその固有の用途が廃止されたものと認められた」ということです。
●再使用の可能性 なお有姿除却は再使用の可能性の小さいことが理由ですので、金型については除却後の再使用は認められます。その他の資産では、その後の転用による再使用を排除するものではありませんが、転用後の使用方法について、その資産の本来の用途・用法と相当に異なっているということが条件になります。
●漏れはないか ちなみに、固定資産の廃棄の場合は支出を伴わないことが多いため、現場での廃棄処分だけで済まされてしまうことがあり、結果として、経理処理が洩れてしまう場合が少なくありません。固定資産の多い会社の場合には、少なくとも決算時や償却資産申告時に固定資産台帳の棚卸しをする必要があります。(2008年5月掲載)

土地と建物の価格の按分

●新築の場合 新築分譲建物などについて消費税の額に関係するため、売主において土地と建物との価格区分がなされており、契約書に消費税額の記載があることから建物の取得価額が容易に判別できます。従って土地の価格も残余の価格として容易に判別できます。
●中古の場合 中古物件については、土地と建物の価額の区分についてその売主においても容易には把握できず、それぞれの時価を推測して見積もる必要があります。 建物の取得時価は、計算的には再調達価額により求めますが、これは現在の一般的建築単価に面積を掛け、そこから減価償却費を控除して算出します。 土地には中古概念はありません。土地の取得時価は、計算的には相続税評価額や固定資産税評価額を公示価格ベースに換算して求めます。これらの算出時価の比で、取得に際して支払った総額を按分して土地建物のそれぞれの時価額を確定します。
●固定資産税評価額は使えないか 按分比については固定資産税評価額での比は使えないでしょうか。建物の固定資産税評価額は新築等された際に算定されていますが、一般的に取得価額の5割から7割に定められ、それは毎年同じ価額が納税通知書に記載されています。土地は3年ごとに評価替えがなされ、それは概ね公示価格の7割を基準に定められています。時価は動的なものですから、このように市場の変動への感受性の鈍いもの・割安の設定になっているものは、土地重課の時代には時価算定の価額按分の尺度としては使われていませんでした。
●最近は変わった ところが税務署および審判所は、固定資産税評価額が同一の機関で土地及び建物の評価を行うものであるから、その比を一括購入価額に乗じて建物の価額を算出するのは相当というようになっています。 むしろ相続税評価額の比での按分計算は公の機関での評価額ではないので、忌避されています。(2008年5月掲載)

金地金の売却と所得税

 ドルの信頼が揺らぐと「金」の価格は高騰します。まさに、金の信頼は絶大なのもで、金本位制の復活です。ところで、この金(金地金)を個人が売却した場合、売却で得た所得(売却益)はいかなる所得に区分されるか気になるところです。というのも所得の区分によって税の負担額が異なるからです。譲渡所得と区分されれば 50万円の特別控除の適用、さらに譲渡が長期譲渡に該当すれば、譲渡益の2分の1のみが課税対象になります。
(1)所得区分の判断基準 一般的には、金の譲渡による所得は、原則として、譲渡所得に該当します。ただし、金の譲渡が棚卸資産の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれ譲渡に該当する場合には、その譲渡による所得は、事業所得又は雑所得に該当します。 所得の区分は悩ましい問題ですが、これは事実認定に関する事柄であり、個々の事案、売買の回数、売買金額、売買方法、資金の調達、金の運用状況その他諸般の事情を総合的に勘案して判定されます。
(2)譲渡原価等の計算方法 金の譲渡による所得が譲渡所得に該当するとした場合、金を二回以上にわたってそれぞれ異なる価額で購入し、さらに、当該金を同一年に全て譲渡していない場合、当該所得の計算上控除される取得費及び譲渡原価の計算方法も気になるところです。これについては明確な規定はありませんが、一般的には、譲渡所得の基因となる「有価証券の取得費等」及び「有価証券の譲渡原価等の計算及び評価方法」の規定に準じた、「総平均法」に準ずる方法により計算するのが合理的と考えられています。
(3)短期・長期の判定 譲渡所得の短期・長期の判定は、譲渡資産の所有期間が5年以内であれば短期、5年を超えるものは長期となります。金の譲渡も例外ではありませんが、所有期間のカウント方法に関して明確な規定がありません。現実の実務においては、「有価証券の譲渡所得が短期譲渡所得に該当するかどうかの判定」に準じ、先入先出法により判定されているようです。(2008年5月掲載)

デリバティブ取引に係る未決済損益の計上について

 商品を海外から輸入している会社においては、通貨オプションや通貨スワップ取引を利用して包括的長期為替予約契約を銀行と結んでいることが多いようです。こういったデリバティブ取引をしている場合、期末に未決済となっている取引について期末に決済したものとみなして算出した利益の額または損失の額は、所得の計算上、益金の額または損金の額に算入することと法人税法上定められています(法61の5①)。中小企業においては、会社法に特別の規定はありませんが、中小企業の会計に関する指針の16および47で「デリバティブ取引により生じる正味の債権および債務は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は、当期の損益として処理する。」と定められており、会計上も法人税法と同様の取り扱いとなっています。つまり、金融商品取引法の適用のない中小企業でも、期末未決済のデリバティブ取引の評価損益は、会計上、税務上計上の義務があります。繰延ヘッジ処理が可能かという点が問題になりますが、通貨オプションや通貨スワップ取引による包括的長期為替予約契約については、法人税法上、適用できないと規定しています。なぜなら、期末時換算を行う外貨建債権債務については期末のレートで換算され、為替リスク部分は損益に計上されるので、それに係るヘッジ手段であるデリバティブ取引の損益を繰り延べる必要はないためです(法61の6①二)。なお、国税不服審判所の裁決(平19.1.29 東裁(法)平18-162)では、スワップ取引のみなし決済金額を益金の額に算入した更正処分を不服とした請求人の主張を棄却しています。①先物為替予約契約ではないこと、②金利スワップ取引ではないこと、③期末時換算資産等に係る為替相場の変動に伴う損失は繰延ヘッジ処理できないこと が理由となっています。また、平成15年2月18日付日本公認会計士協会リサーチ・センター審理情報№19「包括的長期為替予約のヘッジ会計に関する監査上の留意点」では、次のようにまとめています。1年以上の予定取引は、輸入見合いの長期の円建売契約がある場合を除き、原則として会計処理上は投機目的と考えられる。ただし、(1)為替相場の合理的な予測に基づく売上と輸入(輸入品目は要特定)に係る合理的な経営計画(通常3年程度)があり、かつ損失が予想されない場合もしくは、(2)輸入予定取引に対応する円建売上に係る解約不能の契約があり、かつ、損失とならない場合のみ、当該予定取引をヘッジ対象とすることは監査上認められる場合もある。平成17年2月8日の青山商事㈱のIR情報「平成17年3月期の業績修正の可能性について」では、商品仕入に係る包括的長期為替予約契約について「ヘッジ会計」を適用していたが、「時価会計」に変更するよう監査法人から示唆されているとあります。結果、平成17年5月6日の「業績予想の修正に関するお知らせ」では、「時価会計」の導入によりデリバティブ評価損失計上に至っています。中小企業は監査対象ではありませんが、参考になるかと思います。したがって、期末未決済のデリバティブ取引において評価損が出ている場合には、税務上、未計上でも問題にはならないでしょうが、期末に評価益が出た場合には計上せざるを得ず、未実現利益に対する税金支払いが発生しますので、資金繰りの準備が必要になりますから注意が必要です。課税庁においては、①輸入取引の実態があり、②途中解約が基本的に不可能な長期契約であり、③信用リスクに晒されていない場合 には、包括的長期為替予約契約についてはデリバティブ取引の期末未決済損益の計上を不要とすることをご検討いただきたいと思います。
(参考資料)『税務通信』№2646 pp.13-21 廣瀬彰 「クーポン・スワップ契約に係る法人税課税について」『税務通信』№2781 廣瀬彰 「クーポン・スワップ契約に係る法人税課税について(2)」『税務通信』№2794 廣瀬彰 「クーポン・スワップ契約に係る法人税課税について(3)」『税務通信』№2825(2008年5月掲載)

今年の確定申告では「所得税率」にも注意

 所得税の確定申告期(今年は2月18日から3月17日)を前に、各地では確定申告相談会などが盛んに開催されています。その相談会において、所得税率についての認識が誤っているケースが意外と多いようです。 所得税の税率は、今年(平成19年分)の確定申告から変更されています。具体的には、昨年(平成18年分)まで4段階(10%、20%、30%、37%)だった所得税率が、6段階(5%、10%、20%、23%、33%、40%)に変更されています。 確定申告の相談会には、既に作成済みの確定申告書を持参し、その記載内容が間違っていないかどうかを確認しにくる人がいます。その申告書を見てみると、適用されている税率が昨年の税率に基づくものであるケースが散見されたそうです。 特に目立ったのが、最低税率の適用誤りです。昨年までは課税所得330万円以下に対する適用税率10%が最低税率でしたが、今年からは課税所得195万円以下に対する適用税率5%が最低税率になっています。この変更を知らなかった人が、どうせ最低税率だからと昨年の税率をそのまま記載してしまうようなのです。 また、毎年、年末になると所得税確定申告のマニュアル本が書店に数多く並びますが、前年版のマニュアル本を参考に申告書を記載した結果、適用税率が誤っていたというケースもあったようです。 適用税率を誤って申告し、それに気が付かないまま確定申告期が過ぎてしまうと面倒なことになります。申告前には税率の変更についても確認をしておきましょう。(2008年3月掲載)

誤りやすい医療費控除について

 確定申告の中でも特に、医療費の領収書の整理は煩わしいものです。しかし、この領収書の申告書への添付または領収書の保存は、医療費控除の要件ですのでやむを得ません。医療費控除は、本人が本人又は本人と生計を一にする配偶者その他の親族の医療費を支払った場合には、支払った医療費の合計額から保険等などで補てんされた金額を差し引き、原則10万円を超えた金額(最高200万円)は、確定申告をすることで所得金額から控除され、場合によっては、税金の還付もあります。 医療費控除の適用となる医療費は、診察、治療等の医療そのもの他医療関連支出も含めると、その範囲は広く、これを正確に峻別することは大変です。ここでは、医療費控除の基本的な事項で「誤りやすい事例」を取り上げてみました。(1) 生計を一にしていない親の入院費を子が負担、その子が医療費控除している。 これは、その子の医療費控除の対象にはなりません。医療費控除は、「自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費」に限られます。(2) 単純に10万円を控除し、合計所得金額の5%相当を控除していない。 いわゆる「足切り限度額」は①10万円 但し、②合計所得金額が200万円未満の場合は、合計所得金額の5%相当額の控除で済みます。(3) 支払った医療費の額を上回る補てん金の額を、他の医療費から差し引いている。 補てん金の対象となる医療費ごとに補てん金の差引計算を行い、他の医療費からは差し引きません。(4) 支払った医療費を出産手当金・傷病手当金から控除している。 出産手当金、傷病手当金などは「補てん金」に該当しないので控除する必要はありません。なお、市区町村から「お祝い金」として支給されるもののなかに、国民健康保険法に基づく給付補てん金に該当するものがあるので留意が必要です。(5) 数年分の医療費をある年分で一括して医療費控除の申告をしている。 医療費控除の対象となる医療費は、各年においてその年中に支払った当該医療費の金額でありますから、支払日により区分する必要があります。(2008年3月掲載)

共働き家庭の医療費控除

 医療費控除は所得税の計算上、本人および本人と生計を一にする家族のために支払った医療費について、その一定額を所得から差し引くことができる制度のことです。具体的には支払った医療費から以下の金額を差し引いた金額(200万円が限度)を所得から差し引くことができます。(1).10万円(所得金額の合計額が200万円未満の人は所得金額の5%)(2).保険金などで補填された金額(※)※医療(疾病)保険などの保険金(入院給付金など)、健康保険や保険組合からの払戻金(高額療養費、一部負担還元金、家族療養付加金、出産育児一時金など) この医療費控除のポイントは、本人だけではなく生計を一にする親族も対象になるということです。生計を一とするとは、一般的には同じ家に住み、生活費が明確に区分されていないケースを言いますが、同居していなくても生活費の送金が常に行われている場合は対象となります。 たとえば、通学のために一人住まいをしている子供、田舎に住んでいる両親などに生活費を送金している場合は、支払った医療費を合算して所得から控除できるわけです。 ところで、生計を一にする親族のうち複数の人に所得のあるケースは少なくありません。夫婦共働き家庭の場合はもちろん、田舎のご両親に年金所得があるかもしれませんし、子供が結構なアルバイト収入を得ている場合もあります。このような場合、個々の支払った医療費を別々に控除することも可能ですが、そうなると医療費から差し引かれる10万円も個々にかかってきますので得策ではありません。親族全員分の医療費控除を誰か一人がまとめて受ける方が有利なのです。そして、この場合には所得金額が一番多い人がまとめて医療費控除を受けるのが、一般的にもっとも節税効果が高くなる方法になります。 所得税は所得金額が多い人ほど所得税率が高くなる累進課税方式をとっています。従って、医療費控除によって所得金額が減少した場合の節税効果(概算的には控除額×所得税率)も、所得金額が多い人ほど大きくなるわけです。 さらに運がよければ、所得金額が下がることで所得税率自体が一段階低くなるケースも考えられますし、所得金額が下がれば翌年6月以降の住民税額も下がります。 ただし、医療費控除は支払う(支払った)税額が安くなるという制度ですから、他に控除や特別控除等があって税額自体が発生しない場合は申告しても効果はありませんし、支払う(支払った)税額が節税の限度額になります。 なお、医療費控除を受けるためには、支払った医療費の明細が分かるもの(領収書やレシート)が必要です。医療費を支払った際には、支払った人別に領収書を保管・整理しておきましょう。また、受け取った保険金等がある場合は、その明細も一緒に保管しておくと良いでしょう。(2008年2月掲載)

こんなときの居住用財産控除特例

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。その限界事例をみてみます。
●同一年に居住用財産を2回譲渡は?両方ともが居住用財産といえるものであれば、適用になります。ただし、控除額は両方あわせて3,000万円が限度となります。
●居住用家屋が2つある場合は? 居住用家屋とは所有者自身が居住している家屋(生活の本拠)とその敷地ということなので、二つ以上の家を持っている場合には、両方が特例適用家屋とはなりません。主として住んでいる家だけです。 ただし、3年内に災害により滅失した家屋の敷地の譲渡と、その後住んでいた家屋と敷地の譲渡が同時になされたような場合には、2つとも居住用財産の譲渡の特例の適用があります。なお、この場合も特別控除額は3,000万円が限度となります。
●外国勤務に際して譲渡した居住用財産は?日本人が海外勤務から帰国した場合などで、帰国前の居住用財産の売買を帰国前に外国にて済ませているのではなく、帰国後に行っているような場合を想定してみます。この場合、3,000万円の特別控除の適用については、居住用財産は、日本国内にあるものに限られないので、適用があります。 ただし、居住用財産の譲渡所得の軽減税率の特例や居住用財産の買換え等の特例の適用については、国内のものに限られていますので、こちらについては適用外です。
●借地権や借家権の場合は? 借地に家を建てている場合、借地権は居住用財産になります。しかし借家権は居住用財産の規定にあてはまっていませんので、借家からの立退料をもらっても、3,000万円の特別控除の対象になりません。
●居住用家屋の敷地の一部の譲渡は? 現居住家屋の主要部の譲渡と同時に行われる敷地の一部譲渡は、適用になります。災害により滅失した元居住家屋の敷地の一部譲渡は、すべて適用になります。
●近親者への譲渡の場合は? 配偶者及び直系血族への譲渡は適用外です。傍系親族等の場合は譲渡の前や後で生計を一にしているときは適用外です。(2008年1月掲載)

遺言には絶対服従?

【遺言の効力は絶対なのか?】亡くなった人の財産は原則として相続人が引き継ぐこととなります。その相続人が複数あるような場合には、協議により分割する場合(協議が整わない場合には家庭裁判所の調停等の場合もあります。)と遺言により分割される場合とがあります。一般的に「遺言」というと絶対的な効力を持っているように考えられますが、その「遺言」が相続人にとってありがた迷惑なようなものである場合にも絶対に従わなければいけないのでしょうか。
【民法上の理解】いくら遺言は亡くなった人の遺志だからといっても、その財産を引き継ぐ人(「受遺者」といいます。)の意思を完全に無視するようではあんまりです。そこで民法では、原則として他の相続人に対して一定の期間内に意思表示をすることにより、受遺者は遺言により引き継ぐことになる財産を放棄することができる旨を定めています。ですから、各相続人が遺言による財産の引継ぎを放棄した場合には、あらためて遺言書とは異なる内容の遺産分割協議を行うことができることとなります。
【税法における留意点】民法上は亡くなった人の財産の分割について期限は設けられていませんので、利害関係者が十分な納得するまで協議をしても、家庭裁判所に調停をしてもらっても何ら問題はありません。しかし相続税法では申告期限(原則として10ヶ月以内)が定められていますので、それまでに何らかの形式を整えて申告書を提出しなければなりません。協議がそれまでに整っていないようであれば、仮に「未分割財産」として期限までに申告をし、その後確定した分割においてその修正をすることになります。 その場合、分割が確定するまでは税額を少なくする特例が使えなくなる等の不都合が生じますので注意が必要です。(2008年1月掲載)

還付加算金の取り扱いに注意

 年が明けて1月になると、所得税の還付申告の受付が始まります。還付申告とは納めた税額が多かった場合に税金を還付してもらうために行う確定申告です。 所得税の申告というと、2月15日から3月15日の確定申告期を思い浮かべますが、還付申告は1月1日からの申告が可能で、また5年以内ならいつでも申告することができます。 多額の医療費を支払った人、災害や盗難などで資産に損害を受けた人、特定の寄付をした人、配当所得があり配当控除を受けられる人、退職して年末調整をしていない人、年末に結婚したり、子供が生まれた人などは、還付申告をすることにより税金が還付される可能性があります。 なお、法人でも源泉徴収税の納付、法人税等の予定納税、消費税の中間納付など、確定納税額の前払い的な意味合いのある納税があり、そこで払いすぎた税金がある場合は還付金が戻ってきます。また「更正の請求」の結果として還付が受けられる場合もあります。 基本的に法人が還付金を受け取った場合は、雑収入などの営業外収益と処理します。 ところが、税金には損金に算入できるものと算入できないものがあり、たとえば、法人税や所得税、住民税は損金に算入できません。 このように損金に算入できない税金の還付金を益金として課税してしまうと、納付時と還付時において二重課税されることになります。そこで、法人税額の計算においては、この還付金を調整して二重課税にならないようにしています。 一方、事業税や固定資産税などについては損金に算入することができますから、法人税額の計算時において調整する必要がありません。単純に雑収入などで処理すれば良いわけです。 ここで注意しなければならないのは還付加算金の取り扱いです。還付金が振り込まれる際に受け取る振込通知書を見ると、裏面に「還付加算金は雑収入(雑所得)として、課税の対象になりますので注意してください。」との表示があります。 還付加算金とは、税金の滞納や延納をした場合に延滞税や利子税などが課せられることとのバランスをとるために、還付金に加算される利息のようなものです。従って、どのような税目の還付金に対する還付加算金であれ、法人税の計算においては課税されることになります。 つまり、法人税などの還付の際に還付金と還付加算金を一緒に処理してしまうと、税額の計算を誤ってしまう可能性があるのです。 還付加算金については、還付金とは別に処理(仕訳)する。還付金の振込通知書は必ず保管しておくといった対策が必要です。なお、個人が受け取る還付加算金も同様の扱いになりますので注意が必要です。(2008年1月掲載)